ここを見て気になったので。

 昔、プリメーラのマルチAVシステム車に乗ってたころの話。
 ある日突然16号を走っているはずが何故かアクアラインの無い東京湾を走っていたり、深夜、地図上では筑波から土浦経由で水戸に向かっていたはずなのになぜか筑波山を登らされてマジ迷子になる症状が。

 他にも症状が出てたのでディーラーに入庫してユニット交換してもらってとりあえず収まったものの、数年後に再び同様の症状がでてまたユニット交換。
 中身はどうやら日立モバイル製で、修理伝票にはジャイロ異常とGPS異常とCPUボード異常によるモジュール交換。

 仕事でGPSの生データ(NMEAフォーマット)を扱うことがあるのだが、モジュールによってはアルマナックを完全に取得してない状態でも嘘(誤差の多い)位置情報を垂れ流すこともある。もちろんGPGGAのクオリティが0だったり、DOPが高かったりして普通は切り捨てるのだが、もしそのデータを使っていたとしたらとんでもない位置に地図が飛ぶ可能性もある。
 もうひとつ、衛星の正確な位置情報であるエフェメリスも、取得できない間は誤差の大きいデータを流し続ける。GPSユニットによって動作は違うが、取得完了するまで(DOPが一定以下)unlock状態とする製品と、lockして数分かけてDOPが減っていく製品がある。後者の場合、ホスト側でDOPを無視してGGAやGLLの位置情報を拾っていると、誤差が徐々に収束していくのがわかる(エフェメリス取得が一瞬で終了してしまうと見れないかもしれない)
 もちろん取得後も、受信機側の時計の誤差や計算誤差などでドリフトは常に起きている。

 このようにGPS受信機はDOPがひどい状態でも位置情報を垂れ流していたりするのだが、それを利用するかどうかはすべてホストに委ねられている。もし、カーナビがなんらかの故障で誤差の多い位置情報を利用してしまったとしたら、誤差が収束するまでの間位置がズレまくることになる。もしくはGPS受信機そのものの故障により誤った位置情報をナビのCPUが信用してしまうこともある。
 ただしこの二つの現象はあくまでGPS測位のみのナビの場合である。ジャイロ(方位センサー)や速度センサーなどを併用するハイブリッド型ナビの故障では更に複雑な現象が起きる。

 東京湾を走っていたときには方位は合っていた。つまり位置だけが東に何キロもズレていた。これはGPSデータが誤っているかもしくは受信不良か、CPUがGPSデータを無視していると思われる。

 筑波山を走らさせていたときには走行方向に係らずナビ内の車の方向が刻々と変わっていた。最終的には半径20kmくらいの円を描くようにくるくると廻っていた。しかもカクカクとぎこちない動きだったり真横に動いていたり。この場合は方位センサーが壊れていたのだと思うが、どうやら自立センサーとGPSの情報に食い違いがある場合、自立センサーの情報を優先していたようである。しかしそれでも一応GPSの位置情報に合わせようとがんばってはいたようで、それが横ドリフトだったりカクカクとした動きにつながっていた模様。

 自車の場合、それらの故障が複合的に起こり更に難易度が増していたが、結局は2DINユニット交換ですべて解決となった。しかし短期に再発したところをみると元々設計に問題があったか、もしくは電源など他の問題があったのかもしれない。